『ワークショップかぶらぎ』では、主に精神疾患を抱える方を対象に、印刷作業や軽作業などを行っています。病気や障害の克服というより、“利用者さんが歩んできた道を大切にしながら、自分の人生を取り戻す”というのが目的。そこに伴走するのが、私たちの役割だと思っています。

実際のご相談のなかには、「いずれは就職を考えています」という人もいます。しかし、よく聞いてみると「親に働けと言われている」とか、「医者から福祉施設に通うように言われて」といった理由であることも。その時に私は、「あなた自身はどう考えていますか？」と聞くんです。やっぱり、“自分がどうしたいのか？”が大切ですから。まずは利用者さんが経験してきたことや、自分はなんのために働くのか、などについて語り合います。そして、“その人が本当に求めているもの”を明確にしてから、仕事をはじめていきます。

“仕事”って本当によくできていて、“人が幸せを感じる要素”がたくさん詰まっています。たとえば、誰にだって得意なこと、不得意なことがありますよね。でも仕事の中には、必ずその人が活きる場所が見つかるものです。他にも、仕事をしていればミスが起きたり、短納期でハードな場合もあります。そんな時に、仕事場の仲間たちが協力してくれたから、なんとか乗り切ることができた…。仕事を進めるなかで、こういったさまざまな体験を繰り返していくうちに、利用者さんの表情が明るくなっていくんですよ。また、体調管理の方法や、生活の困り事などをグループで話し合う場もあります。その環境には、けっして独りでは到達できないアイデアが溢れています。ここで発見したことを、まずは試してみる。たとえ結果に結びつかなくてもいいんです。大事なのは、自分で決めたことを、やってみることですから。こんな風にかぶらぎは、“自分らしさを取り戻す、きっかけがある場所”でありたい。そのために私たちにできることを考え、実践していこうと思います。