「岩﨑さんとは練習したくないよ」と言われ、目の前が真っ暗になってしまった…。話の舞台は〈エレクトーンクラブ〉。4人のメンバーに加えて、職員2、3人でサポートしながら、いろいろな場所で演奏会をしています。僕がクラブに入ったのは、責任者だった先輩に「元吹奏楽部だろ、じゃあ決まりだな!」と、強引に誘われたから(笑)。家に眠っていたフルートが活躍するなんて、思いもよりませんでした。
けれど、音楽経験のありなし以前に、理由もわからずメンバーから嫌われてしまったんですから、途方にくれていました…。「次の演奏会、岩﨑くんがまとめてみな」。悩んでいた僕に、先輩はいきなりそう言ったんです。不安を感じながらも練習を重ねるなかで、ようやく自分に足りない部分が見えてきました。それはメンバーみんなが、人生でこの時間をとても大切にしているということ。それなのに僕は、日常業務を覚えるので精一杯。「ちゃんとやらなきゃ…」と焦るばっかりで、“たのしもうとする気持ち”が少しもありませんでした。対して、みんなから好かれている先輩は、遊ぶかのように、自由にのびのびとやっていた。そういえば吹奏楽部の顧問が、「音楽はこころだ!」なんてよく言ってたな。少しずつ肩の力も抜けてきて、メンバーとの距離は近づいていきました。
そして、発表会の当日。僕たちは最高の演奏をすることができた。聴衆の手拍子に合わせて、笑顔でエレクトーンを弾く、ご利用者さんと僕。「音楽って、みんなをひとつにするんだなぁ」と、しみじみ感じました。また最近は、メンバーの白井さんとふたりのユニットでも活動中。なんと今では、市民会館でのコンサートや、一般企業のパーティーにも招かれるほどになりました。演奏を終えたあとに訪れる、一瞬の静寂。遅れてやってくる、ホールから響きわたる盛大な拍手———。この〈エレクトーンクラブ〉が、頼りなかった僕にくれたもの。それは、自信という光です。